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2019年6月1日(土)フィールドワーク 「関内アートスポットめぐり


2019年6月のART LABOでは、美術ジャーナリストで画家の村田真さんがアトリエを構える「長者町アートプラネット」と、同じく横浜にある、古いビルの一室を改修して立ち上げたばかりのギャラリー「アズマテイプロジェクト」さんにお邪魔しました。  

村田真さんは、美術ジャーナリストとしてartscapeなどで展覧会評を書かれているほか、画家としても活動されています。今年のART LABOのテーマである「1960〜80年代の現代美術」にお詳しいということで、今回お話を伺うことにしました。  

村田さんは1954年生まれ。東京造形大学絵画専攻を卒業し、ぴあ編集部を経て、1984年からフリーランスの美術ジャーナリストとして活動されています。2004年には、横浜市が推進する都心部再生プロジェクト「BankART」の立ち上げに関わり、BankARTスクールの校長に就任します。若いアーティストのために横浜にスタジオを設けて安く貸し出すレジデンス事業もBankARTが主導しました。
村田さんが現在アトリエを構える長者町アートプラネット(CHAP)は、黄金町エリアにある4階建のアート複合ビルです。かつて非合法の売春宿が林立していたエリアを改修し、新たなアートの拠点とするために設立されたスタジオのひとつです。1階がアトリエ、2階がホール、3・4階が若手アーティストが住むアパートとなっています。  

村田さんは画家でもあり、その作品数は300点以上にも及びます。今年の9月にも個展を開かれるそうです。パロディを多用して既存の美術のあり方をワンテンポずらすような、一筋縄ではいかない、ダダ的な作品が特徴です。バンクシーの「落札後に切り刻まれた作品」のパロディを作ったりと最新の動向にも反応されています。

村田さんの作品のひとつに、「安く市販されている絵画に何かを描き足して変質させてしまう」というものがあります。毎月1万円程度で定期的に絵画が送られてくる頒布会があるそうで、その名もなき画家の作品に、ピカソ風の絵や原爆のモチーフなど、少しだけ異質なものを描き足すのです。村田さんは「価値が低いとされている作品にもモノの記憶がある。美術産業の価値を換骨奪胎したい」と話してくれました。  

さて、70年代に絵画を学ぶ学生だった村田さんは、「1960〜80年代の現代美術」にも同時代的に反応していました。村田さんは「ドナルド・ジャッドのミニマルな作品に衝撃を受けて、何を描いたらいいかわからず、もうそれ以上絵が描けなくなってしまいました」と話してくれました。「若かった自分の青春の純粋志向と、現代美術の純粋志向が自分の中で一致してしまったんです。もう絵画は終わったのではないか。世界でも日本でも、60〜70年代はそんな時代でした」と当時のことを振り返ります。


強烈に覚えているエピソードとして、ある日画廊に行ったら、テーブルに空き瓶が1本置いてあるだけだったそうです。当時美大生だった村田さんは「これが現代美術なのか」と途方に暮れてしまったのですが、それは田窪恭治さんの「バーボンが1本空くまでのはなし」というパフォーマンスの残骸だったそうです。  

後半では、村田さんにART LABOメンバーがそれぞれ質問をしていく形となりました。 「日本の百貨店が現代美術に与えた意義について」という質問には、1975年に開館した西武美術館の思い出を挙げ、「最初に日本の現代アーティストを美術館でやったのはあそこだった。堤清二さんはいわゆるシャワー効果ではなく、本気で現代美術の価値を信じていた」と語ってくれました。

また、この時代のキーパーソンとして川俣正と岡ア乾二郎のお二人の名前を挙げてくださいました。その理由は「それ以前の70年代は作らなかったが、彼らは再び『作る』ことを始めた人たちだから」。村田さん自身の経験も踏まえ、「当時の若い作家はものを作ることに逡巡していた。一歩踏み出そうとする人もいれば反発する人もいて、何かが始まりそうな予感のする時代だった」と振り返っていただきました。
続いて、村田さんと一緒に、長者町アートプラネットから徒歩5分のところにあるギャラリー「アズマテイプロジェクト」さんにお邪魔しました。イセザキモールに面した伊勢佐木町センタービルの3階。まるで時間が止まったような古いビルを登っていくと、そのギャラリーはあります。


アズマテイプロジェクトは、アーティストの東亭順さんら4人が立ち上げた「創造的実験場」です。その意義を東亭さんは「この場所で私たちが見たいものを見せてもらい、それを記録していくプロジェクト」と説明します。
私たちが訪れたときには、利部(かがぶ)志穂さんの展示が開催されていました。利部さんは廃材や日用品などに手を加え、人と物とのかかわり合いを提示するインスタレーションや映像作品を作っています。

イタリア・ミラノに2年間滞在していた利部さん、以前発表された、低価格のファミリーレストランであるサイゼリヤのロゴの上に高尚なピエタの像を組み合わせた作品(今回のフライヤーのメインビジュアル)には思わずクスッとしてしまいました。利部さんはこの場所について、「近所の人が訪れることが多く、東京で展示をするのとはまた違って新鮮な印象です」と話してくれました。

 横浜の街にたたずむ古いビルを、アートの力で再生しようと挑戦している2つのプロジェクト。またぜひ訪れてみようと思いました。  

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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