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過去の美術めぐり
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2013年3月9日(土) ブリジストン美術館「筆あとの魅力─点・線・面」展

3月9日㈯に美術めぐり第二回目でブリジストン美術館を訪問しました。 前回は、現代美術の「会田誠展」でしたが、今回は美術の王道?である西洋美術を鑑賞することにしました。

ブリジストン美術館のコレクション展「筆後の魅力―点・線・面」は、画家たちの筆あとが特徴的な28点を紹介するとともに、印象派前夜から20世紀に至る美術の展開、そして日本近代洋画、戦後の抽象画絵画までと、約170点が展示されていました。
参加者の皆さんは、ブリジストン美術館は何度も訪れている方たちがほとんど・・ 西洋美術史にもよく登場する著名な画家たちの絵画作品をどう楽しく鑑賞していくのか、正直ちょっと悩みました。   それで、展覧会会場でのキャプションに書かれている「展・線・面」についての記述がどの作品を表しているのか、クイズをつくってみました。
@ 即興的な線   A どっしりとした幅広の筆あとの線   B 動的な運動を感じさせる面   C 斜めの線でできた色面   D 輪郭線と色面による装飾性   E 幾重にも重なった線   F 単純で明快な色面   G 色面と太い線と点の競合と調和   H 効果的な黒い色面   I 毛髪のような美しい描線  

 答え・・
@ 佐伯祐三≪テラスの広告≫ 佐伯の素早い線による広告や室内の描写は、パリの日常を感じさせます。どんな日常?私にとっては、がたつく椅子やテーブル、はがれかけたポスター(笑)。でも、そんなパリに「大人のパリ」を感じます。佐伯が無くなる1年前の作品。

 A ピエール・スーラージュ≪絵画26May 1969≫ スーラージュは、「作品の完成は、作品・作者・観者の三つが存在して成り立つ」といっています。観る者の立ち位置、光、感情によって作品は変化するー確かに、太く描かれた筆あとは、視線を変えることで新しい表情をみせてくれます。

 B ハンス・ホフマン≪Push and Pull≫ 美術理論を展開したホフマンはその理論を実証する作品を多く描いています。これもその作品。描かれた図形のかたち・色・タッチによって、前後、左右に画面が動いて見えるから不思議です。

 C ポール・セザンヌ≪サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール≫ まだヴィクトワール山の連作の中で、建物が描かれている作品。山、空、森、建物を固有物と捉えず「塊」として描き、それらは斜めの線を集めた面の集合で表現されています。印象派に「堅牢で永久性のある権威」を付加したいと考えたセザンヌの「秩序」への関心が伺えます。

 D ポール・ゴーガン≪乾草≫ なんだか美しい絵画・・それもそのはず、ブルターニュの小さな宿屋の食堂を飾るために描かれた絵画ですから。3本の木が真ん中に描かれていて、私にとっては、ハズシのない画面構成の印象です。輪郭線といい、ちょっと日本の影響があるのでしょうか?

E ジャン・フォートリエ≪人質の頭部≫ 何層にも重なった線で描かれた「人質」の目、鼻、口は、定まらない彼の視線や思考を想わせます。「悲しい」とか「辛い」を超えた苦痛の表現。こんな境遇になりたくないし、加害者にもなりたくない。

 F 藤島武二≪東海旭光≫ 藤島、晩年の作品。何度か当館で鑑賞した作品ですが、となりにザオ・ウーキーの 作品が並んだことで、藤島は昼、ウーキーは夜を描いているような錯覚になりました。 藤島の「サンプリシテ(単純化)」の典型的な作品。

 G パウル・クレー≪島≫ 展・線・面が調和した作品。作品名≪島≫と明記されていなかったら何に見えるか?私はサーキットコースに見えました。一筆書きの線だからでしょうか。暖かいオレンジ色のグラデーションの画面に几帳面に描かれた点は、線でできた面を埋めています。

 H 安井曾太郎≪薔薇≫ フランス留学からもどっての長いスランプの後、1929年に描いた女性の座った姿の作品から、安井スタイルが確立していきます。この薔薇は、まさに安井調の薔薇。背景の黒が薔薇を浮き立たせています。それにしても、どっしりした男らしい薔薇だこと。

 I 藤田嗣治≪猫のいる静物≫ 同時代に描かれた、東京国立近代美術館≪闘争≫の猫と比較しても楽しい作品。面相筆で描かれた繊細な線は必見です。西洋の絵画題材である静物画に、東洋の日本画的な線で描かれた食材や猫、鳥がプラスされた作品。上から目線の猫は藤田自身でしょうか。
その他、カミーユ・ピサロ、クロード・モネ、アンリ・ルソー、ジョルジュ・ルオー、ラウル・デュフィ、ジャン・デュビュフェのそれぞれ二枚を比較し 最後に私が得意の?ファッションネタで田中敦子≪作品(たが)≫を解説して終了しました。  

2時間、たっぷりと(立ちっぱなしで)鑑賞した西洋美術でした。参加者の方たちの熱心な鑑賞や感想に助けられて、楽しい時間を過ごしました。 美術館でのトークは、知識による解説でなく鑑賞にしたいと考えています。 まずは第一印象、次によく見て発見、つぎに描かれているものの選択や描き方などの効果。 その次に情報の提供にしたいと思い、今回は私の感想を多くお話しした美術めぐりでした。  
                                  (アート・エデュケーター 中村宏美)
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