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2022年9月3日(土)フィールドワーク:「ガスミュージアムを訪問してみよう」


9月3日、小平市にあるガスミュージアムを訪問しました。

 ガスミュージアムは、都市ガス事業の歴史、ガスの関わりを紹介している歴史博物館ということで、いつものアート訪問と言うより遠足気分でワクワクとバスから降りると素敵な赤レンガの建物が見えてきました。

本日は、ミュージアムの高橋さんにお話を伺いながら展示を回って行きたいと思います。 ミュージアムはガス灯館とくらし館の2棟から構成されていて、どちらも明治に建築された建物を移設復元されたという当時を彷彿とさせるような外観と内観で、ここだけタイムスリップしたような気分になります。   
それではガス灯館1階から行きましょう。
ガス灯の発祥国はイギリスですが、日本で本格的にガス事業が始まったのは明治5年、高島嘉右衛門がフランスの技術者であったアンリ・プレグランの協力によって横浜にガス灯を設置したのが始まりだそうです。
その2年後には東京にも85基のガス灯がともり、この工事もこの2人の指導のもととのこと。 ここでは室内の照明を消し、高橋さんより明治期のあかりの移り変わりの実演していただきました。

まずはろうそくから。
現代人の私からするとろうそくのあかりは癒されるとか風情があるとか思ってしまいますが、これだけで生活するにはかなり暗く不便だと感じます。
次にガス灯です。
ろうそくに比べると明るいですがむき出しなせいか不安定な感じもします。
そして、ガスの炎にマントルを被せるガス灯。これはもう映画メリーポピンズリターンズの点灯夫ジャックが歌って踊って点灯していくシーンのように、街も心も明るくなるような安定した明るさです。裸火の5倍の明るさとなったガスマントルで生活が変わっていき文明開化のシンボルとなったのが理解できる実演でした。


展示の中あった歌川国松の横浜瓦斯局を描いた錦絵を見ると、和と洋が混ざり、時代の変わり目を見ることが絵を通しても分かります。  

何よりもびっくりしたのが“花ガス“というもの。菊の花かたどったガスのイルミネーションだそうで、看板やイベント、お祭りなど野外で使われていたそうです。現代で野外で集まる場所にこんなにも燃えてむき出しの照明を置いていたら大変なことになるだろうというくらいインパクトもガス灯の威力も抜群でした。

明治10年上野公園にて開催された第1回内国勧業博覧会の様子を描いた絵、小林清親の作品でも人々の驚きや感嘆が今日の私ように描かれています。  
照明の展示もただ明るくするだけではなく、デザインや装飾にこだわっていました。当時のおしゃれスポットや鹿鳴館ではこんな照明に照らされて人々は夜を楽しんでいたのかなと思うとガスの普及は社会を変え生活様式を変えた第一人者ですね。
次にガス灯館の2階へ。 こちらは文明開化の時代を描いた錦絵を中心に企画展を開催しているギャラリーとのことです。 今期開催されていたのは“日本のあかりのうつりかわり“というガス事業誕生150年企画で、古灯器からガス灯への展示でした。(2022年7月16日〜9月19日) 炎のあかりは薪、油、ろうそく、石油などと移ろうとともに日本伝統文化の様々な工芸の技を活用した灯器が紹介されていました。 ここでもデザインがやはり気になるところ。

年代が不詳のものが多かったですが、燃料や用途によってデザインが凝らされているのを感じました。 牛糞灯台、臭水灯台といったネーミングも形や由来が面白いものから、有明行灯など風情を感じるもの。特有の臭いや光の強さのあるアセチレンガスを用いた吊下式のランプなど。
使いやすさだけでなく形や機能を考えられていて明治大正時代になると日本伝統文化と西欧の近代文明が融合したあかりとなっていました。 


続いて、建物を移動して“くらし館“へ。

こちらの館では、料理や暖房、お風呂など暮らしの中で使われてきたガス器具や都市ガス供給の歴史を明治から現代まで展示されていました。
実際に使われていたものが展示されていて 中でも明治時代の台所として展示されていたのは、大隈重信邸で使われていたものと同じデザインといわれている現在の価格では約400万というレンジ。とても大きく立派なものでした。
流石に一般的なキッチン向けではないですが、明治36年に出版された村井弦斎の“増補注釈「食道楽」“という春夏秋冬からなる4冊の料理書籍の口絵に近代的な台所として紹介されたのをきっかけにガス釜が一般家庭でも普及されるようになります。
その口絵というのが素晴らしく、配膳される様子からたくさんのキッチン用品、働く方々の着物の柄まで事細かく描かれていて、レストランの厨房のような豪華さが伺えます。
確かに現代の我が家でも、、、というようなキッチンではありますが、一つ一つにわぁ素敵と憧れてしまうのは今も昔も変わらずといったところでしょうか。
その他の展示としては、ガスコーヒー沸器 、食パン焼き器、ゆで卵器など、初めて見るものばかりでしたが、デザインがユニークで思わずかわいいと言ってしまうものが多々ありました。  
また、昭和初期になるとさらにデザインや広告にもモダンで西洋風な生活を取り入れた内容になっていき、ガスの需要が急激に増えていったそうです。
当時の住宅の再現などがあり、床材や家具など実際に使っていたものを展示してあるそうで、ガスの歴史だけでなく当時の生活を想像しながら見るのも楽しいと思いました。


2階には鍵盤を押すとガラス管の中の炎が変化し柔らかい音を出す仕組みになっているというガスオルガンが展示されていました。こちらも初めて見るのものでしたが、なんと!見た目重視のオルガンで音とガスは関係ないという高橋さんの言葉に一同びっくりと爆笑でしたが、映像を通じて貴重なオルガンの音色を聴かせていただけました。  

 

最後に庭内ですが、ここでは17基のガス街灯が今も点灯しています。それらは、横浜や、浜離宮、湯島天神などを照らした歴史的なガス街灯です。最後もタイムスリップしたような気分で本日の訪問は終了となりました。 

 ガスの歴史だけでも楽しい博物館でしたが、生活様式に伴うデザインの変化や文明の進むスピードの速さにも驚き、とても勉強になりました。 今年のテーマである“社会環境とアート“、今回はとても身近で生活に欠かせない内容の見学をさせていだだき感謝します。
                                            (書記:中嶋)

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