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2022年7月2日(土)フィールドワーク:「本年テーマに即した展覧会を見てみよう!」


7月2日、例年にない早い梅雨明けに伴う猛暑日でしたが、私たちは表参道近辺の二つのギャラリーを訪問しました。  

【GYRE Gallery】
今回の展覧会は「世界の終わりと環境世界」とのことで、今年のアートラボ年間テーマが「社会環境とアート」なのでまさにぴったりの内容です。通常の開館時間前に特別に入館させていただいたばかりか、ディレクターの飯田高誉氏に解説までいただきました。

飯田氏は東京大大総合研究博物館小石川分館にて現代美術シリーズを連続企画し、青森県立美術館美術統括監、森美術館理事などをご歴任されている方です。その素晴らしい経歴にも関わらず、ご本人は柔らかい物腰と気さくな雰囲気でとても魅力的な方でした。また、同氏は80年代に草間彌生氏がまだ日本で無名だったころから展覧会を企画してきたとのお話は印象的でした。
さて、作品ですが、最初に私たちを迎えてくれたのは、なにやら緑っぽい大きな映像パネル。
マルセイユ港に捨てられたゴミ(オブジェ)が光に反応する微生物とともに浮かび上がる映像でした。(『光合成』リア・ジロー)まさに環境問題を扱った作品ですが、その深い緑は綺麗でいながら不気味な光沢を放っており、それがむしろ問題の切実さを突きつけてくる気がしました。

   次の作品は壁に大きく映し出された動画作品。女性が部屋の中で不可解ともいえる動きを繰り返しています。身体の内なるカオスがテーマらしいですが、作家はなんと図形絵画で知られる荒川修作氏とのことで我々もびっくり。このような作品も作っていたとは。飯田氏いわく、これは1960年代渡米後最初の作品で、図形絵画はこの後からとのこと。ちなみに画面に登場する車輪はマルセル・デュシャンの車輪とも関係ありとのお話でした。荒川氏はNYでデュシャンとチェスをする仲でもあったとのこぼれ話も伺いました。  


フロアの真ん中には、アニッシュ・カプーア氏の『1000の名前』。インド旅行時に見つけたカプーア氏お気に入りの顔料を使ったインスタレーション作品です。

白い粉は広大な自然を表しているようでもあり、一方、今のご時世から核爆弾の死の灰をも想起させるものでもあるとのこと。私自身は10年前に行った広大なブラジルのレンソイスの砂漠を思い出しました。

ちなみに同氏はファーレ立川や金沢21世紀美術館にも展示がありますが、スケールが大きくて、好きなアーティストです。  

 

 加茂昴氏の『逆聖地』は壁いっぱいの巨大な絵でした。氷の大地の中で人々は火に包まれ、ある者は瞑想し、ある者は横たわり、ある者は走り出す。その意味するものは、「抗議」でしょうか。

調べると同氏は被爆者の方々の描いた被爆体験の絵を模写する活動もしています。作家の平和や安全への強い思いを感じました。

 

草間彌生氏は60年代と90年代に製作された2つの動画作品。60年代の方は「ポルカドットで自己を消滅させ環境に溶け込ませる」という作品。

90年代の方は広大で見事なひまわり畑の中で同氏が幸せそうに花と戯れている様子を映した作品。同氏のポルカドットはここでも躍動していました。  

 AKI INOMATA氏の『ギャロップする南部馬』は、絶滅した日本固有の南部馬を3Dの氷像に仕立て疾走させる動画作品。南部馬は人間が何度も外来種と交雑させた末、純血種はもはや消滅してしまいました。

人間の業の深さを感じさせる作品です。時々骨が露出したようにも見える氷像に、絶滅してしまった悲哀を感じ切なくなりました。  

 

大小島真木氏の『ゴレム Form-02』は2つの作品で構成。一つは植物、動物、バクテリアなどが生きる棲家としての「人体」を表した写真作品。もう一つはトルソーに銀河の映像が次々と投影される作品。

人間はこの世の主役でもなんでもなく、宇宙や自然の中のほんの一つの存在でしかないことを訴えているとのこと。銀河の投影は見応えがあり、「人間よ、うぬぼれるな」という思いもしっかり伝わりました。  

 

作家は日本、海外、年代と幅広く、質はどれも高いと感じました。そして内容的にも「“世界の中心は人間”という傲慢で誤った概念を捨てるときが来た。人間は自然に生かされているという謙虚な気持ちが大切なのだ」というメッセージを確かに受け取ることができました。  



【SOMSOC Gallery】
2ヶ所目は原宿駅方面のSOMSOC Galleryを訪ねました。 こちらは今年6月にオープンしたばかりのギャラリーで、若いエネルギーに溢れていました。
北京、上海、東京、バルセロナを舞台にアートマネジメントに携わる東山研氏からお話を伺いました。

まずこのギャラリーですが、アジア的なニューカルチャーを若者の街 原宿から発信しようという思いで立ち上げたそうです。SOMSOC とはコスモスを逆に読んだもの。コスモス(宇宙)は、人間の体の中にもあり、アートはそこから生まれるのでSOMSOCと名付けたとのことでした。
そして今展覧会のテーマ『暴走(BOUSOU)』はコロナで溜まったエネルギーをアートで爆発させる主旨とのことで、11人のアーティストに集まってもらったそうです。
 下記いくつかの作品を紹介します。
 静電場朔(Dian) 『走れ!蝸牛』はカラフルなポップアート作品。作家自身も病気と闘っている中、他の病気の人にエール送る作品とのことでした。  

Oooooono『「族車」紙紮』は暴走族のバイクのオブジェ。背もたれ部分が左右に揺れているが、なんと犬の尻尾をイメージしてるとのことでかわいい。  

赤松絵葉&喬頑頑の 『SHOBUN最終処分』は様々な大きさの画面にカラフルな文字やデザインが流れるちょっとナムジュン・パイクのようなビデオ作品でした。
実はこれらの電気製品は、全て自身の不用品で展示が終わったら全て無償で希望者にプレゼントするとのこと。
環境も気遣ったちょっと粋な作品でした。


上野雄次氏『花のすがた-標(しるべ)』は針金、金属、木材で生花を形作った作品。
シンプルながらどこか精神性も感じさせる作品で気に入りました。
他にも、竹を編んで作った茶室を車のルーフ上に乗せた移動式茶室の作品もあるらしいです。
但し7月17日最終日のみ正面の道路にお目見えとのこと。  

知名度の高い明和電機の90年代制作の楽器作品がありました。その日の夕方は同アーティストのワークショップがあるとのことでしたが、すでに満員御礼。根強い人気です。
他にも「暴走」した元気いっぱいの作品が沢山あり楽しいギャラリーです。
入口近くにはビールやドリンクが飲めるカフェスタンドもあり、さらに楽しさ倍増しました。    

 今回も充実したフィールドワークで飯田様、東山様本当にご協力ありがとうございました。そして山内先生いつもご調整ありがとうございます。

アクティビティ重ねるうちに本年もはや折り返し地点を過ぎ、今年のテーマを一度振り返る段階に来ました。来月は教室で中間報告です。           (佐々木裕一)

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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