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2021年9月4日(土)レポート報告「フォトグラフィック・ディスタンス」展 栃木県立美術館


1か月前の8月7日、ZOOMで行われたアートラボにおいて、9月4日はフィールドワークとして美術館に訪問することが決まり、メンバーはとても楽しみにしていました。

ところが関東近県にも拡大された緊急事態宣言などの影響で、訪問先の候補として挙げられていた水戸芸術館と栃木県立美術館は臨時休館となり、後者についてはそのまま事実上の終了となってしまいました。
そういうわけで今回もZOOMによる開催となりましたが、栃木県立美術館の企画展「フォトグラフィック・ディスタンス」については、山内先生が事前にその会場で担当学芸員の山本和弘氏にインタビューをできることになり、アートラボの前半ではその報告をしていただけることとなりました。
また、後半には様々な映像表現としてアニメーションやオリンピック関連の映像などをシェアしていただきました。  

展覧会のレポートは栃木へ向かう列車の写真から始まり、美術館への途中の風景、美術館入口から内部へと、リアルに美術館見学をしているかのような画像を楽しむことができました。館内の写真はもちろん許可を得て撮影されたものです。
企画展の名称「フォトグラフィック・ディスタンス」のディスタンスという言葉からは、まさに昨今の状況が連想されます。写真、そして距離。いったいどのような内容なのでしょうか? 以下、山本氏へのインタビューと同氏の長文エッセイ「写真的距離−不鮮明画像としての版画は現代美術にはならなかったのだろうか」も参照しながら、山内先生からの説明をまとめてみたいと思います。  

1970年代、写真を元に制作した版、つまり写真製版を用いたシルクスクリーンの作品が脚光を浴びました。特にポップアートの世界ではこの技法が積極的に使われ、それらの作品は最先端の現代美術として扱われました。また、ポップアートでは印刷物を拡大したときに見えるドットを表現したような作品も人気を得ました。
ですが、1980年代には写真そのものの技術の発達によって高精細で大型の写真作品が制作されるようになり、不鮮明なものからはっきりとしたものを「カッコいい」とする傾向が強く見られるようになりました。

一方、絵画の世界においても、写真や印刷特有の表現に着想を得た作品が作られるようになります。例えばG・リヒターは、不鮮明な写真を素材にして油絵を使って描く手法を生み出しました。山本氏はこれをズルい絵画と呼んでいます。つまり、写真が既に行ってきたことを絵画であえてやって成功したということです。また、S・ポルケは網点のゆるいドットを絵画に持ち込むことで革新的な表現を生み出しました。  

インタビューでは、日本の美術館における版画と写真の扱われ方の違いや、今回大型の作品が4点展示されている秋岡美帆さんにも話が及びました。秋岡さんの作品は1990年代のものがよく知られていますが、2000年代以降は目に触れられる機会が多いとは言えません。
その理由としては、例えば美術館での取り扱いに関しては、どのジャンルに分類するかの判断が難しかったことや、物理的な取り扱いがしにくかったことなどがあげられるようです。
秋岡美帆さんは既にお亡くなりになっていますが、NECOプリントの手法を使ったその作品はふわっと揺れるような優しさにあふれているようです。是非実際に見て感じてみたいものです。  

世の中には鮮明な画像が溢れていますが、その一方では数多くの不鮮明画像もまた存在していて、そこにはアートとしての魅力や未だ引き出されていない可能性が秘められているのかもしれません。そのような目で画像を見ることで、自分の世界を広げていくことができそうです。
また、美術館などで鑑賞する際に、作品との距離を縮めたり、後ろに下がって距離をとってみたりと、私たちは無意識にディスタンスを変えていることにも気づきます。 その理由をあらためて考えてみても面白いかもしれません。  
実際に見ていない展覧会について山内先生のレポートから間接的に伝え聞いて書くことはとても難しく、実際に見ることができなかったのは返す返すも残念でした。  

この日の後半は、アニメーションなどの様々な映像表現を見ました。ノルシュテインのアニメーションは動物の表情など日本のアニメにはない魅力が感じられます。
東京オリンピックに関する海外企業等のCMは、日本で制作されたもの以上にディープな日本らしさが見られて驚きました。さらに、世界の航空会社の安全ビデオは、機内で見るのとはまた違った印象で、特に歌舞伎を題材としたANAのビデオは秀逸だと感じました。早く飛行機に乗りたいです!!  
                                             書記:安田 響

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