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2021年7月3日(土)フィールドワーク「中野周辺の写真ギャラリー施設訪問」


7月のアートラボは中野区にある“写大ギャラリー”と“ギャラリー冬青”の二ヶ所を訪問しました。
最初は中野坂上にある“写大ギャラリー”を訪問しました。ここは東京工芸大学の一角にあるギャラリーです。
東京工芸大学は旧名を東京写真大学といい、写真技術を専門とする大学でした。現在は写真学科、映像学科、アニメーション学科などの7学科が設置された芸術学部と、工学系と建築学系の設置された工学部の2学部で構成されています。
9月4日(土)まで、同大コレクションによる「写真の中の東京は、」という展覧会が開催されています。

展示室は二つに分かれていて、コロナ対策のため各部屋は定員5人ということで、分散しながらの鑑賞となりました。展示は1930年代の土門拳の作品から始まり、年代ごとに、戦後の木村伊兵衛、田沼武能、安保・オリンピックの中谷吉隆、70年代の須田一政、安達洋次郎、街そのものを被写体とした築地仁、ミニチュアのように世界を捉える本城直季、そして森山大道の各氏の作品と続いています。
戦前の活気の感じられる人々の表情や、空襲、復興、オリンピックを経て変貌してゆく街並み、そこに暮らす市井の人々の様子などからは東京という街の変化や多様性が浮かび上り、またモノクロ作品と本城直季氏以降のカラー作品との変化や被写体の捉え方など、作家それぞれの相違も面白く、見ごたえのある内容となっています。
鑑賞の後ギャラリースタッフの深尾さんにお話を伺いました。ギャラリーの設立は1975年、教授であった写真家の細江英公が学生に本物の写真を日常的に見せるためであったそうです。細江英公は学生には作家のオリジナル・プリントを見せることが重要であると考え、現在ギャラリーでは約12,000点の作品を収蔵していて、そのうち土門拳の作品が約1,200点、森山大道のビンテージ・プリントが900点ほどということでした。
オリジナルを見るということは写真を複写されたものとしてではなく、作品として扱うことになるかと思われました。  

さらに質疑応答では展示室の空調についてなども解説していただきました。展示室、収蔵庫の空調は20℃、湿度50%を基準とし、照度についても東京都写真美術館と同等であるとのことでした。見せるだけではなく後世に残さなければとの考えであり、美術館に準じています。
また、本城直季のミニチュアのように見える作品については、地平線を写していないことや大型カメラによる焦点のズレを利用した認識によるもの等の解説をしていただきました。


続いて新中野駅近くにある“ギャラリー冬青”を訪問しました。このギャラリーは写真出版で有名な冬青社のギャラリーです。ここでは竹谷出さんの「路過的人」(7月31日まで)を鑑賞しました。  

竹谷さんは1989年に一年間アフリカを旅したことをきっかけに写真を始め、以来国内外を旅しながら『にほんのかけら』や『影泥棒』といった作品集を発表されてきました。今回の展示は1991年から2012年にかけて延べ8ヶ月間中国に滞在し、路行く人々を取り続けた作品です。当時の中国は目覚ましい発展の途中であり、写された人々からはわずかな間に刻々と変化してゆく様子とパワーが感じられました。と同時に物理的、時間的な距離感も存在しています。この展覧会は1996年に一度発表さているものです。
“ギャラリー冬青”が今年度で幕を閉じるということで、竹谷さんは原点に戻り未発表を含めた初期の作品を展示することに決めたそうです。会場には昨年出版された写真集「影泥棒」とオリジナルプリントも置かれていました。
(『影泥棒』には山内さんの評論が掲載されています。)竹谷さんの最近の作品は古典技法のカリタイプや鶏卵紙、カーボンプリントという技法が使われています。また紙に感光液を塗布しプリントされていて余白が一枚ごとに違っているため、受けるイメージもそれぞれとなっています。


ギャラリーオーナーの橋さんからは有意義な話を聞くことができました。 “ギャラリー冬青”は2005年に開設されました。展示する場としての種類は公的・準公的美術館、コマーシャルギャラリー、メーカーギャラリー、レンタルギャラリーと分けられます。“ギャラリー冬青”はコマーシャルギャラリーのうち、評価の定まった作家を扱うセカンダリーギャラリーとしてスタートしました。
しかし冬青社は5年前から写真集に特化したため、評価の定まっていない若い人たちを対象としたプライマリーギャラリーとして展示を始めました。
若手に門戸を開くプライマリー専門の場所は海外でも珍しいそうです。 若手の作家を選出するときの条件は、フィルムを使った作家、古典技法の作家に限定していて、それ以外には人格とテーマ性、そして発信力だそうです。
「見ればわかる」ではなく、自分の言葉でプレゼンできるコミュニケーション能力によって作家を選んでいるそうです。竹谷さんも4年ほど前から数回ここで展示をされているとのことでした。
先にもふれましたが“ギャラリー冬青”は今年度でクローズします。今回訪問できたのは良いタイミングであったと思います。また作家さんだけでなく写真を取り扱う側の立場の人からも話を聴けたことは、写真に対する理解の幅を広げることにもなりました。                                (文責 高橋)

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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