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2020年8月1日(土)ディスカッション「個人テーマ中間発表+α」


コロナの影響で、ほとんどの美術館が臨時休館し、仕方のないこととは言え美術ファンにとってはもどかしい状況が続いていました。
最近になって、時間予約制で行けるようになったところも出てきましたが、そもそも美術館廻りの魅力の一つには、気軽に思った時に行けるという自由さにもあり、やはり皆さん今の時期は美術館に行く機会は減っているようです。
今は、自由に通えていた頃のありがたみを感じているところです。  

8月のART LABOは、半年ぶり2回目の教室での集まりでしたが、こちらもコロナのため、これまでより広い教室、ソーシャルディスタンスを保った座席や換気とコロナ予防に配慮して行われました。

今回は、5月にオンラインの席上で発表された各人のテーマと進捗状況などの中間発表です。各テーマや状況は発表順に次の通りです。  

「彫刻のメディウムと場所との関係」  
彫刻作品と置かれた場所がどのように関係し、互いに影響を与えているのかと言うテーマです。場所と作品を結びつける台座について特に注目しています。これは3年ほど前に竹岡雄二の展覧会で、彫刻作品のない台座だけが展示された作品を見たことがきっかけで、場所とその作品を結びつけるものについて考えていきたいと思います。  

「太陽の塔〜解体されずに残っている理由」  
今回記録担当の私のテーマです。《太陽の塔》は、大阪万博の時からの憧れで、今も最も好きな立体作品であったためです。万博で建てられたパビリオンは、万博終了後全て半年で解体される予定だったのですが、太陽の塔は5年後には永久保存が決定され、さらに2018年には全面修復ののち再び一般公開されるようになりました。今では大阪の名所の一つであり、パワースポットでもあるようです。本来撤去されるはずであった50年も前の遺構が未だに人を惹きつけて止まない理由が何か?答えが出るかは分かりませんが、万博や作者も含めて色々な角度から探ってみたいと思います。
「古代(ギリシャ・ローマ)の彫刻が後世に与えた影響 」  
ギリシア・ローマ文化(彫刻以外も含め)が後世にどのような影響を与えたかというテーマです。ルネサンス時代になって、約10世紀も前のギリシア・ローマ文化に倣った人間主役の芸術表現が再生されています。ルネサンス以前には中世時代などがあったのですが、それらを飛び越えてなぜギリシア・ローマ文化が再生されたのかといったところに興味を深めてゆきたいと思います。  

「ミニマリズムについて」  
作家ドナルド・ジャッドの作品と同時代の他のミニマリズムの作家について、スライドによる次のような中間レポートがありました。  ジャッドの経歴ですが、大学では哲学を修めますが、絵画作品も制作し、その後木材を媒体とした作品を制作するようになります。1963年頃からはstacks(積重ね)、boxes(箱型)、progression(数列)ということがテーマとなり、以後30年に亘りこれに拘った作品を作り続けました。1965年には自らの作品は従来の彫刻などの芸術作品ではないとして、ヨーロッパ的な美術価値観を拒否する『スペシフィック・オブジェクト(明確な物体)』を発表します。また、ジャッドの作品製作は、図面だけで、実際の製作は職人に行わせていました。1980年代には家具や建築なども手掛けており、その作品は現在でも購入することが可能です。  同時代のジャッド以外のミニマリズムの作家としては、ロバート・モリス、カール・アンドレ、ソル・ルウィットなどがあげられます。これらのミニマリスト作家たちが、なぜこのような作品を作ったのかを考えていきたいと思います。  

 「見えない立体、見える立体。見せない立体、見せる立体」   
例えばミニマリズムの作品は、シンプルな造形であるが、このシンプルさに至るまでの過程が何かあるはずで、そこには隠された或いはわざと隠したメッセージがあるのではないかと考えています。また、フランクロイドライトの落水荘を例にとると、滝や岩盤、その上の建築物に注目がいきますが、建物内部をみるとそこには岩が取り込まれており、そういった普段注目されていないところにもポイントが存在しています。このように見えていないもの、或いは見せていないものに注目して立体を考えていきたいです。  

当日、参加できなかった方からは次のメッセージが届いていました。

「美術鑑賞に於ける空間(立体)知覚(視覚)について」  
クオリアというキーワードに注目して、脳科学領域を中心に文献をあたっているところです。  
「弥勒菩薩について」      
現在、仏教彫刻の歴史を概観しているところですが、対象を弥勒菩薩にするのか、彫刻家にするのか考えているところです。  
 「パブリックアートについて」  
新聞記事記事のコピーの配布がありました。西新宿のアイランド地区パブリックアートプロジェクトの総合ブロデューサー南条史生のコメント(1995.4.8)で「パブリックアートといえばブロンズ像で、しかも女子校の玄関前に女性の裸像を平気で置いたりする。そうでなければ風で動く抽象彫刻で決まり。」と当時のパブリックアートの現状を語ったものです。それと、大江戸線清澄白河駅をデザインした樋口正一郎のコメント記事の紹介がありました。

立体という大きな課題の中から皆さんが選んだテーマは、時代も対象も多岐に亘っていますが、それぞれに興味深いものばかりです。中間報告ではありましたが勉強になることが多くありました。次回の皆さんの発表が楽しみです。    

各人のテーマの他に、メンバーからこの時期貴重な展覧会へ行ったお話しがありましたので、紹介します。  
もう終了(7月26日)してしまったのですが、アーツ前橋にて廣瀬智央の「地球はレモンのように青い」という展覧会です。ここは特に予約もいらなかったそうです。人工と自然といった対比する要素を共存させて、私達が生存する場所はそうしたものだと示した展示でした。ただ、《レモンプロジェクト》という作品では大量の生の国産レモンが敷詰められた展示だったのですが、生モノゆえ多くは腐っており、臭気が新鮮なレモンのものではなかったそうです。作者はレモンの臭気自体も展示物としたかったようですが・・。ただそういった状況は、まるで今のコロナとも重なっているようで、自然の力には勝てないなという思いも感じたということでした。    

最後に、これからのフィールドワークの話の中で、候補の一つとして隈研吾が設計した角川武蔵野ミュージアムが話題になりました。ちょうど今回のARTLABOの8月1日に所沢市で開館したそうです。建物は多面体の岩をイメージしたもので、写真だけみると本物なのかバーチャルなのか見紛うものです。図書館、美術館、博物館が融合した複合文化施設で、紹介ビデオでは非常に興味をそそられる施設となっており期待が高まります。「秘宝館」(荒俣宏監修です)なるものもあるようで、やたらここに反応されていた方もいましたが、それも含め一度行ってみたいですね。                                   
                                          (記録 柴崎牧男)
  
先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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