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2020年2月1日(土)フィールドワーク 府中市美術館「青木野枝 霧と鉄と山と」+公開制作


今回のアートラボは今年初めてのフィールドワーク、府中市美術館を訪問しました。同館では3月1日まで、「青木野枝 霧と鉄と山と」展が開催されています。
青木さんの作品は鉄や石膏といった重さ、硬さを持った素材を扱いながら、軽やかな空間を生み出しています。
今回の展覧会は昨年長崎県立美術館で開催された「青木野枝―ふりそそぐものたち」展、及び霧島アートの森での「青木野枝―霧と山」展での展示にアレンジを加えたもので、東京では20年ぶりの個展となりました。

 美術館に入るとまず目に入るのは、エントランスの吹き抜けに高々とそびえる二つの作品。鉄と波板で作られたこれらは大きな存在でありながら威圧感はありません。展覧会全体の作品数はスケッチやドローイングを除くと全部で8点と少なく、一つの作品がとても大きいものです。鉄の輪を積み上げた作品や石膏でできた山の作品が展示室に、ひとつずつ置かれ、それぞれの空間を作り上げています。
鉄を切り抜いた輪を組み合わせてピラミッドのように積み上げた作品からは、曖昧に遮蔽された空間を感じさせ、周囲にかけられた波板から反射する柔らかな光に包まれています。また鉄のドームの作品のトゲトゲした角の先端には卵が結び付けられていて、作品の印象を和らげています。

これらのほとんどは天井近くまで高さがあり、展示終了後は解体されるとのことでした。  作っては解体するということは彫刻のモニュメントとしての機能を放棄しています。青木さんは作っては崩すという営みの中に自分の彫刻があると言っています。彫刻とは何か、インスタレーションとの区別はあるのか、そんな疑問を感じながら鑑賞していました。

続いて学芸員の武居さんからお話を伺いました。

今回の制作にあたっては展示室内で溶接作業が必要でしたが、通常展示室内は火気厳禁です。それを可能にしたのは以前に同館において青木さんの「空の水」と題した公開制作を行ったこともあり、作家との信頼関係が出来ていたからだそうです。そして同館は今年で開館20周年を迎えますが、早い時期から青木さんに注目していたとのことでした。

 

また、従来彫刻家は男性が多く女性には門戸が開かれにくい社会であったものが、近年その傾向が変わってきたことがあります。また、像を作るというより環境を作るという目的で制作されることが多くなり、美術館だけではなく地方のアートプロジェクトにおいて制作され、周知されることが多くなってきたことなど、次第に彫刻の概念が変わってきた時期であるとの説明を受けました。




続いて同館で公開制作を行っている高嶋さんにお話を伺いました。

 

高嶋さんは人の形や鳥などをモチーフに、それらの顔を壺の形にした作品を作っています。その作品はかわいらしいようで、どこか不安げな印象も受け取れました。顔への興味が壺という形に転化していったそうです。

 

焼き物(陶器)による大きな人体像の作品は、表面に染付のような青い絵付で模様が描かれていて、しかもどこかオリエンタルな雰囲気を感じさせます。滴る金泥は装飾的でありながら、怪しく脆い様相です。焼き物という内部が空洞の作品はカーヴィング(彫像)でもモデリング(塑像)でもなく、従来の彫刻の制作概念とは違っています。

 

高嶋さんは素材を両側から触ることによって、理想の形を創作できると話されていました。

 今回の訪問はなかなか興味深いものでした。

高嶋さんは当初多摩美術大学で日本画を専攻されていました。絵画の平面性の中で見えていたものが空間の中でどう見えるか、空間の中で作品がどう生かされているかを考えているそうです。

 

そして武居学芸員の話された青木さんの、「ドローイングのイメージを素材に生かす」という言葉からも、彫刻という概念の変化を感じ取ることが出来たフィールドワークでした。

 

(文責 高橋)



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