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2019年9月7日(土)フィールドワーク 三鷹市美術ギャラリー「日日是アート」展


今回のアート・ラボは三鷹市美術ギャラリーで9月8日(日)まで開催された「日日是アート ニューヨーク、依田家の50年」展の鑑賞でした。訪れたのは会期終了ぎりぎりの9月7日。
もう少し早く訪れていればと、残念に思いました。本展は画家の依田寿久氏と同じく画家の奥様である順子氏、そして息子で同じく画家の洋一朗氏の3人の作品を展示するものでした。依田家の3人はこの50年間ニューヨークのビルの広いワンフロアを住居兼アトリエとして生活しています。

今回の展示は3人の制作の変化やそれぞれの相違が一目でわかると同時に、親密な一体感に包まれたものでした。 寿久氏は1966年、渡航の自由化が始まった2年後、まだ1ドルが360円で持ち出し可能のドルが500ドルという時代に、いち早く渡米します。
当時は抽象表現主義からポップアートへ、そしてミニマリズムへと、美術の中心は米国にありました。その中で寿久氏は一貫して抽象表現を追い続けました。初期の作品には幾何学的なミニマリズムの影響が感じられましたが、その後の画面上には絵の具の重なりの中に線が表れ、空間を構成するようになっていきます。日本での作品発表は1980年の西武美術館で開催された「Art Today ’80 絵画の問題」展でした。
武蔵野美術大学で共に学んだ順子氏は寿久氏の後を追って2年後に渡米しました。当初は寿久氏のサポートに徹していましたが、次第に手仕事のように色を塗った和紙を割いて束ね、繋ぎ合わせてパネルに張り付けるという独自の手法の作品を作り始めました。
それは俯瞰した航空写真を想像させるような作品や、和紙張りの下地に身近な花やビルをフォトコラージュした作品など、今も次第に変化の幅を広げ、宇宙的視点も感じられるものとなっています。

依田夫妻の作品からは、今年のアート・ラボの年間テーマである「1960年代から1980年代の美術を探る」の中でも重要なポイントとなる「絵画の復権」について参考になりました。 依田夫妻が絵画の画面上の問題を追及しているのに対し、息子の洋一朗氏の作品は具象絵画です。古びた劇場やホテル、そこに立つ影のような人物や、目も鼻も描かれていない子供たち。単なるノスタルジアだけにとどまらない不条理やアイデンティティの問題が隠れているように見えます。洋一朗氏の作品は瀬戸内の女木島に≪女木島名画座≫が常設されています。  

さて、このように作風も年代も違った3人の作品が交互に展示されていた展覧会でしたが、見ていても不思議と混乱することはありませんでした。またいち早く渡米した依田家を追って、そのアトリエには荒川修作や篠原有司男、また藤枝晃雄や堤清二などの作家や評論家、そのほか大勢の美術関係者が訪れたそうです。今回の展示からは依田家のおおらかさと、ニューヨークの激しい競争に打ち勝つためのエネルギーも感じられました。


教育普及担当学芸員の大竹さんにお話しを伺いました。 今回の展示は2012年に洋一朗さんの個展を三鷹市美術ギャラリーで開催した際、学芸員がニューヨークの依田家を訪れたことがきっかけとなったそうです。
三人のそれぞれの制作コーナーと食卓などの生活空間が、壁のない広い一つの空間に同居しているのを見て、それがまさしく日常の中にアートがある「日々是アート」の状態であったこと。そこから今回の企画が生まれたそうです。
彼らの日常の場では創作することが特別ではありません。

今回の展示ではその状態を再現するために様々な工夫を凝らしていました。会場内には所々にカンヴァスに描かれた絵が床置きしてあり、三人それぞれの空間を再現するように椅子やテーブル、本や楽器なども置かれていました。

実際食卓に座って作品を見ていると、微妙に雑多な空間が、まるで自分の家であるように感じられるようでした。この展示に必要とあればギャラリーの職員が自前の家具類を持ってきて使用していたとのこと。そして依田家の一行も、まるでこの場所がニューヨークにある彼らの空間であるかのように、展示室内に置かれたソファに一日中座っていたそうです。

今回の展覧会は一家の空間を再現することでアートと日常との関係を問いかけるものとなっていました。 また大原美術館や東京国立近代美術館などから借用した4点以外のほとんどの作品をアメリカから運搬してきたそうで、大変な労力と費用が掛かっています。今回の企画は巡回展ではなく、三鷹市美術ギャラリーで単独に開催されたもの。費用の面も含め、理解のある体制と熱意のたまものではないかと思います。              (文責 高橋)
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