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2019年7月6日(土)フィールドワーク 「日本橋 高島屋史料館+ワールド・アンティーク・ブック・プラザ


7月6日(土)に開催された、7月度のアートラボでは、日本橋の2つの施設を巡りました。どちらも、美術館でもギャラリーでもありませんが、アートに興味がある者にとって、大変興味深い施設でした。  

最初に訪問したのは、丸善日本橋店の3階にshop in shopの形である、世界の稀覯本を展示・販売している「ワールド・アンティーク・ブック・プラザ」、略称WABPです。 小倉有紀子さんに話を伺います。  
- この店に関して話を伺えますか。
「2011年にオープンした、この店で販売しているのは稀覯本と言われる珍しい本です。美術、文学、社会科学、科学、医学関係など多様な1000冊以上の本を常備しています。中世の写本、原資料を再現したファクシミリ版、古代のコインなどもあります。お客様の要望に応えるため、年2回ロンドンとニューヨークで買い付けもしています」  
 
- 大きく豪華な本が立てかけられているのを見つけて、これはなんですか  

「これは、15世紀スペインの楽譜の表紙です。羊皮紙で作られていて、金属の金具が付けられています」  

-歌に興味があるアートラボ・メンバーは、ラテン語の歌詞が書いてあると、大盛り上がりです。  

「これはミュシャが制作した挿絵本『トリポリの姫君イルゼ』です」  

 - 店の方にアテンドしてもらい、ページをめくることもできます。みんな高価な本に興味津々。  

-  色々珍しいものを探していると、時間がどんどん過ぎていきます。でも、今日はアートラボの今年のテーマ、1960年代から80年代の本を見せていただかなくては。事前に60年代以降のアート関連書籍リストをいただいていたので、その中からいくつかを見せていただきます。  

「これがアンディ・ウォーホールの『車とビジネス・アート』です」


- ページを捲ると様々な車の写真が並んだウォーホールの世界が展開されています。(これは、後から調べたところでは、1986年に自動車発明100周年を記念して、ダイムラー・クライスラーがウォーホールに作ってもらったものです。ウォーホールは死ぬ直前にこんな仕事をしていたのですね)  

「これは、美術雑誌の『アヴァンギャルド』第9号です。表紙のデザインも、ロゴのデザインも、洒落ています」  

 - さすが、60年代。(これも、後から調べたところ、伝説の過激なアングラ・グラフ誌だそうです)1960年から80年の歴史を知ろうとするとき、当時の書籍を手に取ってみると、その当時の熱気や雰囲気を強く感じられます。  

もっとここにいたいという思いが強くなったところで、予定の時間になってしまいました。WABP企画でイベントを開催することもあるということなので、また個人でここに戻って来たいと思いながら、お店を後にします。
 次に向かったのが、道を挟んで反対側にある日本橋高島屋S.C.本館の4階と5階にある高島屋史料館TOKYOです。5Fの旧貴賓室という素敵な部屋で、学芸員の海老名熱実さんに話を伺います。  

 - ここはどういう場所なのでしょうか。  

「百貨店も以前は文化装置として機能していましたが、今はちょっとその機能が弱くなっているようにも見えます。そこで、再び文化発信機能を取り戻したいと考え、新たな拠点として、「高島屋史料館TOKYO」を今年3月5日にオープンしました。もともと大阪には1970年から高島屋史料館(大阪)があり、百貨店に関する様々な資料を保管するアーカイブを形成してきましたが、やはり、再開発も進み賑わう東京の日本橋から発信したいと考え、これを立ち上げました」  

- 今、目の前のスクリーンに映像が流れていますが、これはどんな映像ですか。  

「日本橋高島屋S.C.本館は平成21年に昭和の百貨店建築として重要文化財の指定を受けました。最初の設計者は高橋貞太郎ですが、後に、村野藤吾による増築が行われて、現在の姿になっています。これは、その日本橋高島屋の見どころを解説するビデオになっています。今年の3月から開催した「高島屋史料館TOKYO」の第一回の企画展も「日本橋高島屋と村野藤吾」でした。高島屋の建物にもぜひ注目していただきたいと考えています」


- 今日伺ったアートラボのメンバーの中には、百貨店とアートの関係に興味を持っている人もいます。  

「それは嬉しいですね。以前の百貨店は、屋上に遊園地を持ったり、上層階の催事場で展覧会を開催したりして、お客様を集めていました。その後、公立美術館が多数開館したり、法整備が進み催事場での展示が制約されたこともあり、催事場での展覧会機能・役割が変化していった経緯があります。それでも、百貨店は、店内に現代美術ギャラリーを作ったりして、美術との関わりを持ってきました。残念ながら、なかなか美術批評の文脈でとりあげられることが難しくなっているように思いますが、現在でも、若い作家によるイベントを積極的に行ったり、お得意様への新たなアプローチをしたりする百貨店の動きには注目すべきだと思っています」  

-「高島屋史料館TOKYO」では、企画展や講演会をどのように開催しているのですか。  

「企画展は年間4〜5回開催で、期間中には関連セミナーを行います。今開催中の、デザイン評論家で武蔵野美術大学名誉教授の柏木博先生に監修をお願いした、「パノラマとしての百貨店」は、は6月5日から8月4日までの開催です。展覧会に関わるセミナーもその間に5回行います。またそれとは別に、企画展に絡めない単発のセミナーも企画しています。5月に開催したカオスラウンジ代表の黒瀬陽平さんと美術批評家の紺野優希さんの「アートを支えるのは誰か?」では、いつものお客様とはちょっと異なる20-30代のアーティストの方にもたくさんきていただき楽しいセミナーになりました。百貨店としては画期的な内容だったのではないかと。また、新たな展覧会企画やセミナー企画を考えているので、楽しみにしていてください」
 ここからは4Fの展示会場に移動して、現在開催中の「パノラマとしての百貨店 デザインから消費文化を考える」の展示を見せていただきます。

 会場内には、昭和を生きた人には懐かしいものがたくさん展示されていて、アートラボのメンバーも興味津々です。 最初に目を引くのが、入口入ったところにある2体のかわいいマスコット人形。カルダンローズちゃん。あっ、これは藤田嗣治? そう藤田が作ったと推測されるポスターがあります。

そして目を引くのが、70年代のTVコマーシャルの映像。なんと一本90秒あるそうです。当時の百貨店のライフスタイル提案は随分アーティスティック。展示ケースには藤田がデザインした水着の資料も展示されています。 この展示を見ると、1960年代70年代は、百貨店が、商品を販売するだけでなく、情報を提供し、生活スタイルを提案する、文化のパノラマ装置であったのだということが実感されます。

その時代を生きた人には、思い出が蘇ってくる展示、若い人には、そんな時代があったのだと、興味をそそられる展示でした。   7月は、2施設を見学し、ちょっと違った角度から、60年代〜80年代のアートを考えることができました。2019年も半年経過し、今年のテーマ「1960年代〜1980年代の美術を探る」を巡る活動も折り返し点を通過しました。

アートラボの皆さんが、ここから何を調べるのか、そこにはどんな発見があるのか、そして話はどう展開するのか、楽しみです。            (記述 鈴木重保)

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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