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2017年9月2日(土) フィールドワーク:ケニアの作家&松涛美術館


9月のART LABOもフィールドワークです。  
今回訪問したのは渋谷エリアの2ヵ所です。小雨模様のハチ公前で集合。午前中ということもあって人出はさほどではなく、少しホッとしました。
先ず向かった先は、ケニアの作家、マイケル・ソイ氏のバッグや宝飾、雑貨を輸入販売する潟jーマさんです。
109ビルの裏手、文化村通りから道玄坂に向かう、ちょっとディープな小路に面したビルの2階にあります。
 私たちを迎えてくださったのは、代表取締役の堀田乃倫子さんとナイロビ在住の遠藤真理さん。美大卒業後、共に現地のスワヒリ語学校に学んだ旧知の仲で、去る7月20日から31日までBUNKAMURA Box Galleryで開催されていた「世界に広がるケニアのポップアート マイケル・ソイ展」を共同で企画されました。
たまたま、遠藤さんが一時帰国されたそうですが、本日のインタビューは、自ら版画を制作しながら長年にわたって多くの作家と交流し、現地の事情にも精通している遠藤さんから直接お話を伺える絶好のタイミングということで、堀田さんが特別にアレンジしてくださったものです。
室内には展示を終えたソイさんの絵画やバッグやアクセサリーなどが所狭しと並び、パッと花が咲いたよう。なんだかとても楽しい気持ちになります。
そしてお二人のお話を伺っていると「アフリカ愛!」がヒシヒシと伝わってきます。話すほうも聴くほうも熱が入って、あっという間に時間が過ぎてしまいました。以下、アートを取り巻く「ケニアのいま」について伺ったポイントを記載します。

@    先ずはケニアの基本情報。日本の1.5倍の国土に人口4,800万人が住んでいる。首都のナイロビは赤道付近で暑いと思われがちだが、標高1,700mなので実は快適。
軽井沢のような気候とか。宗教はキリスト教85%、イスラム教11%。イギリス領だった関係で主要言語は英語とスワヒリ語(国内に40以上ある部族を纏めるための言語)。
A    近年、大学が増えており現在22校を数えるが、いわゆる「美術」を学べる総合大学はナイロビの「ケニヤッタ総合大学」(国立、1965年)のみ。あとは専門学校で「ブルブル美術学院」や「ナイロビデザインインスティチュート」(1年制)など。
国立で最もレベルが高いといわれるナイロビ大学は建築、グラフィックなど技術系しかない。 ⇒要するに全体の教育レベルは向上しているが、「美術教育」という点では遅れているということ。実際、遠藤さんも子どもたちに絵を教えているが、家庭で絵を描く機会が少ないためか、クレヨンなどの画材をうまく使えない子もいる。
B    ナイロビにはオークションを活発に企画している「サークルアート・ギャラリー」をはじめ、白人が経営している有力なギャラリーが5〜6軒ある。作品はよく売れるが、顧客はケニア人富裕層やイギリス、ドバイなどの外国人が中心。最近、韓国人も参入し始めているが、中国人はちらほら,日本人はほとんど見かけない。
また現在、「カレン・ビレッジ」という若手作家のためのレジデンシー機能やホールなどを備えた複合施設の建設も進んでいる(来年開館予定)が、白人が多く居住しているエリアに建設中とのことである。ケニア人が経営するギャラリーはごく一部で、美術関連の市場はやはり白人優位となっている。
C    「マンジャーノ」というアートイベントがある。若手からベテランまで誰でも応募できるコンペティションが行われ(優勝賞金33万円)、大きなインセンティブとなっている。
また、毎年11月にショッピングモールを活用した3日間のアートフェアが開かれ(今年は17〜19日)、年々集客数を伸ばしている(2015年は6〜7千人)。出品はギャラリー単位だけでなく、作家個人のブースも目立つ。なお、現在の大統領夫人はアートファンで、開会スピーチから作品購入まで自ら積極的に関わっているらしい。  


さらに、画像を提示しながら新進作家からケニア美術界の大家まで異なるタイプの現存作家26名をご紹介いただきました。以下頂戴したコメントのみ示します。
・全体に若手が多いがエリモ・ンジャウのような重鎮もリストアップした。26名中女性は4名。作家は総じてインテリで対話も楽しい。
・具象絵画が主流。若手はともかくベテラン作家の中には、支持体や画材、サイズなどのキャプション関連情報に無頓着なケースもあり、展示企画などで困ることも少なくない。⇒「海外に紹介される」という意識が薄い。
・このように多くの作家がいるが、日本には殆ど紹介されていない。7月の展覧会はBunkamura Box Galleryで初めてのアフリカ現代アーティストの企画だったので、やはり単独でキュレーションが成立する作家としてマイケル・ソイを選んだ。いずれは様々な作家を知ってもらいたい。  

 残念ながら時間切れとなってしまい、個々の作家については詳細に伺えませんでしたが、その多彩な造形表現に、メンバーからは「続きを是非やりたい」とか「11月のアートフェアはどう?」などの声も上がり、後ろ髪引かれまくりのまま、お暇乞いしました。
さて、次に渋谷区立松濤美術館に向かいましたが、潟jーマさんで盛り上がった結果、こちらのほうは「自由鑑賞」という形となりました。
今回の企画展は「畠中光享コレクション インドに咲く染と織の華」です。ちょうど今、全国を巡回している「興福寺の寺宝と畠中光享展」での展示終了後、再建された興福寺の中金堂に奉納される「高僧の絵」4点を描いた日本画家・畠中光享氏のインド染織コレクションを中心とした展覧会です。
インドの風俗や仏伝を題材にした作品を多く手掛ける畠中さんは、仏教史に造詣が深く、インドの染織品のコレクターとしても有名だそうです。腰巻、肩掛け、儀礼用布、サリー、ターバン、覆い布、ベッドカバー、壁掛けなどあらゆる用途の「布」約150点が一堂に会し、すべて広げた形で制作当初の姿がわかるように展示されています。

「手描き、木版捺染」「銅版捺染」「印金・印銀」「絞」「織」「刺繍」といった技法別に整理され、全体のデザインや版のパターン、色彩のバリエーションなどを対比しながら鑑賞できるように配慮されています。

 館の特徴を活かし天井高いっぱいを使ったダイナミックな展示で、染織の美しさばかりでなく、「モノ」としての圧倒的な量感が感じられました。また、参考出品として18世紀のインド細密画も何点か展示されていましたが、とても素晴らしいものでした。構図、人物表現、色使い・・畠中さんの作品との共通性が感じられ、改めてこのコレクション展の意義を実感しました。

以上、今回はややイレギュラーながら、とても濃密なフィールドワーク体験でした。皆さまに感謝!


ケニアの地で、アートに関わりながら頑張っていらっしゃる方のお話には、その土台にケニア、アフリカ、そしてアートに対する愛あってこそというものをヒシヒシと感じました。

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度来てみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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