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2015年8月1日(土) 真夏のART LABO、勝手に同期会


最高気温が30度を超える真夏日が続くなか、今日のART LABOは屋内での発表会です。暑さのせいか参加者は5名とちょっと少なめです。

 

宿題として出されていたのは、同じ年に生まれた現代作家を二人ならべて比較し、そこから見えてくるものは何かを探してみようというものです。

あまり話がばらばらになってはいけませんから、年を3つ選び、1935年(昭和10年)、1955年(昭和30年)、1970年(昭和45年)とします。

 

そして、皆が同じ年に集まってしまわないように、発表者の誕生月で年を割り振りました。すると、1935年の発表が3名、1955年の発表が1名、1970年の発表が1名となりました。ちょうど良い感じです。

最初は、秋山祐徳太子と高梨豊です。

発表者は二人の業績を社会のできごとと並べた1935年から2015年までの詳細な年表を作り、その二人の差を論じました。

秋山はポップ・ハプニングやブリキ彫刻、また都知事選に出たことで知られています。一方高梨は都市の写真を撮り続ける写真家です。一見交わることのないような二人ですが、1992年にはこの2人に赤瀬川源平を加えて「ライカ同盟」を結成します。

前衛的なものに対する取組の差、後年になっての「ライカ同盟」での共通の取組など、二人の個性の違いと、共通するものに興味を惹かれます。

 二人目の発表者は、場所を海外に移し、1935年生まれのウォルター・デ・マリアとクリストを選びました。ウォルター・デ・マリアは雷の落ちる場をアートにし、クリストは大きなものを包むシリーズの作品で有名です。

この二人の共通点は、アートの場を美術館の外に求めたことです。作品を残すデ・マリアと、作品を残さないクリストの差異も見逃せません。発表者の、「デ・マリアの作品のある直島に行ってみたくなった」という言葉が、このような芸術のありかたを示唆しているようです。

 三番目の発表は、内外対決で、1935年生まれの中西夏之とジム・ダイン。二人とも時代の潮流のなかで、ハプニング(今でいうパフォーマンス)から芸術活動を始め、中西の洗濯バサミ、ジム・ダインの工具など日常の「もの」をつかった芸術を作った点で共通項を持ちます。しかし、発表者は、美術潮流の枠に止まらず、良いドローイングをたくさん残したジム・ダインに注目して欲しいと力説しました。

やはり、コンセプトだけでは収まらない、作品上の表現の質は重要です。

 

 次の1955年生まれの作家対決は、マイケル・ジャクソンとバブルス像で有名なアメリカのジェフ・クーンズと、日本でも国立新美術館で個展が行われたドイツの写真家、アンドレアス・グルスキー。

発表者は、クーンズのアート・ビジネストとの積極的な関わり、グルスキーの写真をディジタル処理する手法など、それぞれの、現代作家ならでは特徴を指摘しました。

ファシリテータ役をお願いしている山内さんからは、それぞれ、20世紀のダダの伝統、抽象表現主義のオールオーバーの伝統につながると解説をいただきました。

 

 1970年生まれは、それぞれ現代の日本のアーティストらしい、國府理と町田久美。國府はソーラーカーから自動車に目覚め、工業製品ではない手作りの車を作ることを芸術とし、また人と自然の関係に関心を持つインスタレーションを行ってきました。残念ながら2014年に製作中の事故で亡くなってしまいましたが、テーマを持った物語を作り続けた作家であったと言えます。

それに対し町田は、和紙に単純化された線描で、かわいくどこか気持ち悪いものを描く作品を作りました。日本では最初受け入れられず、オランダに行き認められ、日本にもどり多くの場で活躍されています。多くのグループ展に関わり活動する姿は、日本の現代アーティストの一つの典型的な姿を示しているようです。

 

 現代作家の生まれた年を固定し、複数のアーティストの活動を比較してみる今回の試みは、時代による芸術活動の違いが際立つ、同じ時代でも作家による個性の違いがわかるなど、興味深いものになりました。実際に5人の方の発表を聞いて、今まで気づかなかったものが、新たに見えてきたようです。

 

 次回は、フィールドワークの予定でしたが、まだまだ暑そうでもあり、山内さんに企画を検討していただくことになりました。

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