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イベント案内

過去のギャラリー巡り
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2023年4月1日(土)目黒エリア「目黒区内にあるコンクリート壁のクールな画廊 ほか

今月は、学芸大学駅から都立大学駅にかけて、2つのギャラリーを訪問いたしました。 ちょうど天気も良く、満開の桜の季節とあって、人が多い街中を抜けてゆくと、一瞬、教会かな?と思うような素敵な建物が見えてまいりました。そこの1階がこの日最初の目的地「RISE GALLERY」です。  

RISE GALLERYでは、8か月を1単位とする「creativity continues」シリーズを通じ、シーズンごとに2名の作家を交互に紹介しています。こちらでは、オーナーの麻生さんからお話をお伺いすることができました。
ギャラリーは2012年から企画画廊としてスタート。
もともとグラフィックのお仕事をされていたオーナーは、かつてこの建物のなかにあった撮影スタジオに仕事で来ることがあり、その後、縁あってここをギャラリーとしたのだそうです。
こちらの空間の最大の特徴はホワイトキューブではなくコンクリート打ちっぱなし壁であること。建物自体もとても個性的ですので、他では見れない作品の表情が出せる場合があるとのことでした。
ただ、やはり展示となると「壁にピンが打ち込めない」ために工夫が必要なことも多いそうです。
ですが、ピクチャーレールに使用するワイヤーは、壁のコンクリートにうまく同化して気にならないというメリットなどもあるとのこと。
ギャラリーに来られた方からは「コンクリートの壁だとむしろ自宅に飾っている感じをイメージしやすくて良い」という感想もあるそうです。  

 「creativity continues」シリーズでは個展や二人展等などを含めて1作家あたり5回の展示を行うため、作家の選定には工夫がいるとのこと。制作に時間を要するような作品を手掛ける作家はスケジュール的に厳しいため、作家との話し合いを通じて、可能な方に依頼するそうです。
「美術大学の卒展や紹介だけではなくSNSなどを使って探す場合もあるが、いずれにしても自分がその作家の作品や展示を見てみたいかどうか?を大切にしている」と、麻生さん。
さらには、「時代のトレンドやウケを狙うような探し方はしない」と仰っており、作家さんとギャラリストさんが紡いでゆく信頼関係が、新しい世界観を見出す原動力になるのだろう…と感じました。  

この日拝見した「小林明日香 個展『chair』」は、creativity continues 2022-2023シリーズの第7回目にあたる展示。
小林さんは美大では日本画を専攻され、3年前に大学院を卒業されました。
小林さん曰く、このシリーズでの発表は、集中力や体力が必要で、制作するためのパワーが必要だと感じているそうです。「2か月に1度のペースでの展示だと、展示中に次の作品制作をする状況になるため、ひとつの展示が終わっても終わった感じがしない。毎回ガラッと内容を変えているのであまり飽きがこないで続けられる」とのことでした。
今回は一つの椅子がテーマ。さまざまな素材や大きさ、アプローチでの作品をじっくりと見ることができました。
展示作品のなかで最も大きなものは、小林さんが「表裏一体の作品を作りたい」という動機から生まれたそう。
布が持つ透け感がうまく表現にも出ていて、独特の表現を醸し出しているように感じました。
また、「椅子」という三次元のものを、二次元に表現する段階での工夫がとてもバリエーションがあって面白く、その世界観をもっといろいろと感じてみたいと思いました。  

もうひとつ、ギャラリーの入口のそばにある「showroom」というスペースでは、「干場月花 個展「それは波のように。」」も開催中でした。
作品の色彩には特徴があり、なにか一度見てしまうとくぎ付けになる不思議な魅力があるように感じました。麻生さんいわく「こちらの存在に気づいていない人の絵が多い。現代人独特の孤独や不安を描いている。」とのこと。
写真家が街並みの中にいる人たちを撮る「ストリートスナップ」のような感じにも見える気がしました。
後ろ髪を引かれるように、RISE GALLERYをお暇し、都立大学駅方面へひたすら移動。次の目的地は都立大学駅前の商店街の「KATSUYA SUSUKI GALLERY」です。
ギャラリーに入ってみると、ふっと静かな時間と空間が広がっていました。
この建物はもともとは靴屋さんで、そこをギャラリーとしてリノベーションして開業されたそうです。  

 オーナーの須々木さんからお話をお伺いいたしました。
もともと画廊に勤めていましたが、色々考えた末、ご自身が生まれ育ったこの地で新たに自分でギャラリーを始めようと場所を探し、2021年3月にスタートしたそうです。「ここはパーシモンホールがあることで、文化的な香りがするエリア」とのことです。
こちらのギャラリーは、若手の作家、なかでも30歳前後の作家さんを主に扱っています。
須々木さんいわく、「卒業して何年か経ち、作家活動を辞めていく人もいる。そのタイミングを下支えできないかという思いがある。」とのことです。
  
今回は河合真里さん、河本理絵さん、長谷川海さんによるグループ展「interval」を拝見しました。須々木さんがもともと個別に気になっていた作家で、集まったら統一感があっていい雰囲気になるかな?と思い、「この空間を3人で考えてね。」というスタイルで今回の展示を企画したそうです。
「グループ展の面白さを楽しんでもらいたい。」というギャラリストさんならではの愛情だと感じました。
今回は、河合さんと河本さんが在廊されており、お話を伺うことができました。河合さんは、手のようなものが描かれた作品を中心に展示されていました。陰影による立体感がなんだか柔らかそうな空間を生み出していました。
何の手?誰の手?と考えてしまうようなリアリティと、猫かな?ぬいぐるみかな?と思うようなほわほわ感があり…と思うものも作家さんいわく「一体何だ?」思わせるということが狙いのひとつだそうです。
見ようによっては怖さや不穏さもあるが、それは狙っているわけではなくあくまでも自然な感覚で制作に向き合っているとのことです。
河本さんは、布に絵具を「染み込ませる」感覚で描いているそうです。水彩画・水墨画のような感じがするその作品の質感は、意外とリスキーな描き方で、失敗は許されないが、この方法でしか出せない良さもあるとのこと。

長谷川さんの作品は、「夢が起点。見た夢をもとに製作をしている作家さんです」と須々木さんが解説くださいました。

3人の女性による展覧会は、初々しさのようなもののあり、芯を感じるような感覚もあり、それでいてまだまだ流転してゆくんだろうな…という可能性を感じる感覚もあり・・というなんだかとても春らしい展示だと感じました。
その後、みずみずしい気持ちを引っ張りながら都立大学駅まで皆さまと歩いて解散となりました。

 このイベントを通じて、一人でも多くの方が、さまざまなギャラリーへ気軽に足を運んでいただけるようになってほしいという願いを込めて、4月以降もまた「ふらっと入りにくいギャラリー」へ訪問してみたいと思います。

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