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2022年3月5日(土)フィールドワーク:「アーティストの仕事を見てみよう」


この日のア−トラボは久しぶりのフィ−ルドワ−クへ。四谷周辺の画廊3か所を訪ねました。

ギャラリーヨクト  
訪問は四谷4丁目のビル内にある「ギャラリーヨクト」で開催中の、山崎弘義氏の写真展『Around LAKE TOWN10-There is no place like HOME-』からスタ−トしました。「ギャラリ−ヨクト」は2017年にオ−プンし、現在9名のメンバ−により運営されているギャラリーです。当日は山崎氏ご自身にお出迎えいただきました。マンションの一室には26枚の写真展示があり、いずれもここ数年にわたり越谷レイクタウンで暮らす人々を撮影したものです。

「There is no place like HOME」とは、我が家にまさるところなしという意味で、家族写真を撮影した折にその家のリビングに置かれたプレ−トに書かれていたものだそうです。私自身、数年前に中心にあるショッピングモ−ルを訪ねたことがあります。都会の喧騒から離れ現れた町の景色は、何もかもが広く明るく新しいといった印象を与えるものでした。そんな町に住む人々。各々の住まいの前であるいは家の中で、ひとりであったり家族であったり、笑っていたり、はにかんでいたりする姿がそこにあります。比較的若い人々が多く、しかも一見したところ、どれも無造作に撮られたかのように見えます。実際、山崎氏自身も作品について、「記録写真です」と淡々と述べられていました。しかし、鑑賞する側としてはそれ以上の何かがあるような気がしました。  

「レイクタウンシリ−ズは2017年9月のオリンパスギャラリ−での個展を皮切りに今回で10回目となる。今回の展示は今まで取り組んでこなかった住宅地の撮影を中心に構成した。ニュ−タウンはいずれも成熟し、老成していく。それは他地区の例を見るまでもない。果たしてこの町はどう変貌していくのか。これからも見続けたい。」

 

これは、山崎氏がこの写真展の解説パネルに寄せた一文です。山崎氏はこの町の近くで育ち今も暮らしておられるとのこと。大学を卒業後に市役所に勤務された経緯もあり、越谷のひとつの町の大きすぎる変貌を、そばでずっと目の当たりにされてきました。山崎氏はこの急激な変貌ぶりに、特別な想いを抱いたのではないでしょうか。

 

作品には過去から現在に至り未来へと、その想いを伴ったファインダー越しの視点があるように感じたのです。この写真展は10回目の開催とのことですが、いつの日か、その長い視点を繋ぐ時が来るでしょう。その時「記録」としての作品は鑑賞者の側に立ち、その想いと重なり「記憶」という新たなかたちで完成が任される、そんな写真の在り方を追求されているのではないかと思いました。

 

今回の展示作品ではないですが、山崎氏の代表作のひとつ『CROSSROAD』は1990年から1996年にかけて都内で撮影されたストレ−トなスナップ写真で、このシリーズは写真集として刊行されています。今よりたぶん、ずっと活気や熱気があった東京。30年経った今、モノクロのストレ−トな写真に「懐かしい」とは異なる何かを感じましたが、適当な言葉が見つかりません。ただ、かつて養老孟司がその著書の中で「町が変わるのではない、人が変わるから町が変わるのだ」と述べていた言葉を思い出しました。昨春、オリンパスギャラリ−でこれらの作品を大きくプリントした写真展が開催されていたと知り、見逃してしまい残念。いつか機会があれば作品の前に立ち、再度、言葉にできないこの気持ちと向き合ってみたいと思います。

 https://www.shashasha.co/jp/book/crossroad



TS4312

ギャラリーの名称「TS4312」とは、Tokyo、Shinjuku四谷3丁目12番地の住所からとられているそうです。
世界のどこからでもこの画廊の場所がわかってもらえたらとの思いが込められているそう。店主の沢登丈夫氏はとても気さくな方です。退職後の2013年にご自身の所有するビルに開廊され、企画とリセ−ルの場として、自身の収集作品や若手作家を中心に展示を行っておられます。
この日もとても78歳とは思えない若々しさで、終始にこやかにご対応いただきました。印象深かったのが、かつて作品の価値はどの画廊で扱われてきたかで決まるようなところがあり、額の裏に画廊のシ−ルが貼られており取引の際の参考になったという話です。その際、南画廊の志水氏についても語られていたので、帰宅後に調べてみることに。
60年から70年代にかけて海外作品ではアメリカ人作家を中心に現代ア−トをプロモ−トした主要な人物と知り、その仕事ぶりに興味を持ちました。 当日は國分郁子氏の『やわらかな強制(Soft Coercion)』の作品展示が行われていました。作品は全てコラ−ジュ。会場に入るや否や、作品から受けるカラフルな生命感に圧倒されます。

「彼女の作品は、パタ−ンの文様をバックにオブジェ(私は生物と思っている)が現れている。そして、個展毎に、ひとつの物語が繰り広げられる。平面によるパフォーマンスである。(中略)世の中は何か知らず知らずに規制を受けている。この生物は何かに束縛され、儚く壊れそうである。作家の心が覗かれる。作家は、この世界の大きな絡み合いを静かに凝視している。」

 

これは沢登氏がギャラリーのホ−ムペ−ジに寄せている作品へのコメントです。このコメントをきっかけに作家と作品への関心が高まり、改めて、先に2017年に同所で開催された『すばらしい新世界/Brave New World』のリーフレットを拝見しました。

 

作家は当時より人間は地球規模での生命のあり方を考えていく必要があると述べており、現在も手法を変え、新しい生物たちの地球劇場を紡いでいるのだと気づきます。なかでも、とりわけ私も含め女性陣に人気があったのが「顔のない青い鳥が休まる場所」です。そのテ−マも、文様とたらしこみの構成も絶妙で魅力的な作品です。



ところで「TS4312」は、山内先生より事前に少しびっくりするかもしれないとおどかされ?立ち寄った2か所目のギャラリーでした。

それは嘘ではなく、エレベーターの扉が開いたとたん、入口で完全にノックアウトされることに。それでも私は直ぐにその場に魅了されました。個人的にカオスな状態が落ち着く性分なので、居心地の良ささえ覚えたのは私だけだったのでしょうか?
KIYOSHI ART SPACE

3か所目のギャラリーでは、宮岡貴泉氏の個展『SCRAP&BUILD –TAKAMI MIYAOKA SOLO EXHIBITION』が開催されていました。
手もとにある案内状には、宮岡氏は「埼玉を拠点に作陶を始め、素材を見極めた技法と様々なアプロ−チを試み造形表現に取り組む」とあります。
その通り、当日はユニ−クでキュ−トな沢山の作品に出会うことができました。


出会うという表現が一番しっくりする理由は、その陶製(信じられない!)の作品にはすべて顔のようなものがあり、いつかどこかで会ったことがある気がしたから。
更に案内状を読み進めるとそのわけが分かりました。

「時代とともに変化する偶像美術に着目し、陶芸と現代のマンガやアニメ・キャラクタ−を組み合わせた手法で作品を制作」とのこと。

なるほど! 宮岡氏は先に拝見した國分氏と同じ1980年代生まれ。作品について強いメッセージが秘められているのに関わらず、インテリアになるほどモダンな印象であるのも同じ。
衝撃だったのは、宮岡氏自身より昨年、火事でアトリエが全焼し、これまでの作品も失ってしまった事実を伺ったことです。

現在、信楽のアーティストレジデンスで創作を続けており本展がその新作であるとのことですが、そんな不運を感じさせない躍動感にあふれた作品ばかりです。
帰宅後、今回のフィ−ルドワ−クでは、このギャラリーで撮った写真が一番多いことに気づきました。宮岡氏は、今後私にとって目が離せないア−ティストのひとりです。できれば作品と暮らしたい!

さいごに、 当日は山崎様、沢登様、宮岡様及びスタッフの皆さま、快くご対応頂きありがとうございました。
 今回のア−トラボは、流行り病の影響や週末であることから主だった美術館へのグル−プ訪問が困難な状況の中で実現したもの。やはり実際に鑑賞できることは嬉しく充実した一日でした。
山内先生には毎回ですが、コ−ディネイトにご尽力いただき感謝申し上げます。
改めて、ありがとうございました。                              (早川美鈴)  

先生から何かを学んだり、イベントに参加したりという形では得られない「自分なりの学びと楽しみ」が見つけられる月1研究会ART LABO。
ぜひ、一度いらしてみてください♪ きっとそこには、楽しい仲間たちとの素敵な時間が待っていますよ♪
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