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2016年10月1日(土) フィールドワーク「根津美術館」


10月のART LABOはオシャレな街、南青山界隈のフィールドワークです。「根津美術館」と「伊勢半本店 紅ミュージアム」を訪問しました。

まずは根津美術館に集合。鉄道王と呼ばれた東武鉄道の根津嘉一郎が創設した日本・東洋美術の殿堂です。現在の建物は2009年、建築家の隈研吾によって新装されたもので、「屋根と庇」をテーマに日本の風土に根ざした表現を取り込んだ独特の造形です。

本館は2階建ての近代建築でありながら、重さを感じさせない清澄な展示空間です。とりわけ40mにも及ぶエントランスは、いつも「すっ」とした気分にさせてくれます。

東京メトロ表参道駅からISSEI MIYAKEPRADACartierなどのショップが建ちならぶみゆき通りを歩くこと数分。南青山の現代的な空間から来館者をその特別な展示区間に導く、まさに「橋掛かり」のような役割だと思います。

もうひとつ、忘れてならないのは、国分寺崖線南端の急勾配を効果的に利用した広大な庭園。館内に入るとこれも常設展示のひとつであることが実感できるはずです。



今回は企画展「中国陶磁勉強会」を中心に鑑賞しました。はじめにひととおり作品鑑賞。「勉強会」と銘打った展覧会だけに、英語と日本語で詳細に書かれたキャプションも重要な展示要素です。古代から清に至る中国陶磁の歴史展開の流れと、「唐物」として日本人の視点から見た中国陶磁の美についてわかりやすく解説されていました。

展示品は約8,000年前の土器から始まり、重要文化財4件を含む121件と大変な数です。近年になって「土中から発掘された」唐時代までのものは黒い台座とパネルで暗めに展示され、北宋時代以降の比較的新しいものは明るめの展示になっています。作られた時代によって形や色彩・文様が多彩に変化するのですが、何と3,500年前頃には人工の釉薬が発明されたことが中国陶磁の目覚ましい発展につながったようです。

3-4世紀の《青磁羊》の丸々としてカワイイ姿、うっすらと黄みがかった6世紀の《白釉蓮弁文四耳壺》の色彩が印象的ですが、日本ではまだ古墳時代の頃というのですからオドロキです。《青白磁輪花小皿》(南宋時代)の薄く繊細な形態、《青地白花木蓮文皿》(清時代)にみられる地色と文様との鮮やかなコントラスト、欧米で「カフェオレ釉」と呼ばれる《淡茶釉三果文椀》(清時代)の柔らかく上品な色味など、景徳鎮窯の多彩な表情も堪能しました。その他、常設のテーマ展示も充実していました。

 

その後、美術館中二階のスペースで担当者の方に展覧会の準備などについてお話しを伺いました。同館は7,420点(平成283月)と膨大な収蔵品を擁しているため、年7回の企画展は殆ど収蔵品中心で実施でき、わずかなインターバルの中、2日程度で集中して展示替えしているそうです(一部借用が必要な場合は、年間スケジュール立案と同時に早めに準備)。

 





「勉強会」とした今回の企画ポイントは、中国陶磁の歴史と日本の焼き物の知識を対比させながらその違いを考えることで、8つに分けたセクションについて、上述の明暗の対比や、日本人の美意識に合わせた空間設定など、展示方法に関する工夫も伺いました。その他教育プログラムや図録、ポスター・チラシの準備、HPの活用などについてご教示いただきました。

今回、「学びつつ」鑑賞することで、これまで縁遠かった中国陶磁がより身近に感じられ、理解が深まりました。

ちょっとだけ賢くなったうえ、秋の名園を散策してゴキゲンのメンバーが次に向かったのは、同じく南青山、骨董通りに面した「伊勢半本店 紅ミュージアム」。

文政8年(1825年)日本橋小舟町に紅屋として創業し、伝統的な紅作りの技法を守っている唯一の化粧品メーカー「伊勢半本店」の企業ミュージアムです。

はじめに、スタッフの方から館の概要と紅の製法などについてレクチャーいただきました。紅は山形県の最上川流域を中心に栽培されている良質の紅花を原料として作られます。紅花の色素は99%が黄色色素で、赤色色素はわずか1%しか抽出できず、とても手間暇のかかる仕事です。現在、紅作りの職人さんは2人しかいないそうです。精製した紅を「紅猪口」という小さな容器に塗り、乾燥させたものが昔ながらの口紅「小町紅」となりますが、良質な紅は乾くと「玉虫色」になるとのこと。実物を見せていただきましたが、まさに玉虫の翅の如く光り輝く緑色。不思議な色彩の妙です。

 

展示室では様々な化粧道具や錦絵などの資料が展示され、紅花のルーツから江戸以来の化粧文化、疱瘡(天然痘)など病よけのまじない、人生儀礼における魔よけの習俗、紅花交易の変遷などを知ることができました。展示されている一つひとつの化粧道具がとても綺麗で、素晴らしい意匠の逸品揃い。コンパクトな空間ながら、まとまりの良い展示となっていて、見応え十分でした。

 

展示を見た後は、サロンスペースで「紅()し」体験です。ミュージアムスタッフの方が実際に紅を点してくれます。3名の女性メンバーが挑戦。皆初めてのようでしたが、口紅とは全く異なるナチュラルな色味と、ベタつかずサラッとした点し心地の良さに感激しきりでした。 なお、同館では企画展や、化粧をはじめとする紅の文化や工芸に関連する講座などのイベントも年間を通して企画しています(残念ながら当日は会期外)。年間スケジュールを見ると、興味深いものばかり。今回初めての訪問でしたが、とてもステキなミュージアムです。皆さんも是非足を運んでください!

 

ということで、流行発信の地、南青山で工芸の歴史と伝統を学んで感じた、とても充実した10月のART LABOでした。                                            (記述YS


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