• トップ
  • 会員案内
  • サークル概要
  • 認定講師制度
  • 資料請求

イベント案内

過去の美術めぐり
ART TRANSIT TOP > イベント案内 > レギュラーイベント > 美術めぐり > 過去の美術めぐり

2013年11月9日(土) 東京国立近代美術館 常設展

東京国立近代美術館のコレクション展に行きました。所蔵品ギャラリーのリニューアルに合わせて、ハイライトのコーナーが出来ていました。重要文化財を中心にしたこのコーナーは、濃紺の壁や映り込みに少ない床を使用、落ち着いた雰囲気です。

 

昨年、三笠宮崇仁親王殿下より寄贈を受けた平福百穂の≪丹鶴青瀾≫は初公開。そのほぼ半年後に描かれた≪荒礒≫が並んで展示され、迫力でした。

 

原田直次郎≪騎龍観音≫、萬鉄五郎≪裸体美人≫、岸田劉生≪切通之写生≫など重要文化財の作品を鑑賞、続いて盛田良子コレクションのジョルジュ・ブラック≪女のトルソ≫など、ヨーロッパ絵画の著名な作品に触れることが出来ました。

次の部屋からは、特集「何かがおこってる:1907-1945」と題して、文展が開催された1907年から第二次世界大戦終戦の1945年までの、日本の社会背景に呼応した絵画が時代を追って展示されていました。まずは、第一回文展で最高賞に輝いた和田三造≪南風≫。八丈島への渡航中の漂流体験を絵画にしたものですが、帝国主義へ向かっていく日本の姿を、中央のギリシャ彫刻のような体格の男性に重ねる見方もあるそうです。たしかに漂流というより堂々とした立ちっぷりです。

 

1910年の高村光太郎の「緑の太陽」に代表される、ゴッホやマティスの日本への紹介は、当時の画家たちに大きな影響を与えました。川上涼花≪鉄路≫や萬鉄五郎≪太陽の麦畑≫に描かれた太陽は、ゴッホのタッチの影響でしょう。でも、当時のゴッホを知ることができたのは、小さなモノクロ挿し絵のはず。彼らの「学びたい」という情熱も暑い。

1923年の関東大震災は、東京に大きな打撃を与えると同時に、復興以上の近代化が進むきっかけとなっています。大衆という概念が生まれ、古賀春江≪海≫のような作品が誕生する背景も納得できます。コンセプトからオブジェの時代です。津田青楓≪犠牲者≫≪ブルジョワ議会と民衆生活≫などをみると、日常の欲望に浮かれて近代化する一方で、弾圧が存在し、徐々に大きな戦争に向かっている動きを感じます。藤田嗣治≪アッツ島玉砕≫は何度見ても「恐ろしい」。この作品を見るたびに「戦争はあってはならない」と感じます。

 

大震災から復興していく様子を記録した「復興帝都シンフォニー」というフィルムは32分。当時の最先端都市が生まれていく様子が残されていました。

最後に小野竹喬≪雨の海≫を鑑賞しました。終戦から7年後の63歳の時の作品。写実的でもなく、伝統的な日本画手法とも違う、淡い色で平坦に描かれた島と海の風景画は、省略されているからこそ私たちの心を流し込むことができる、そんな気がしました。海の波形は、平和への安堵なのか未来への不安を表しているのか。戦後の日本画で終わったツアーでした。

           (アートナビゲーター 中村宏美)

過去の美術めぐり一覧に戻る
PAGETOP