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過去のギャラリー巡り
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2022年10月1日(土)新宿エリア: 「絶壁階段を上った先にある小箱のようなギャラリー」

2022年よりスタートした「ふらっと入りにくいギャラリー」訪問シリーズ。
秋のシリーズ2回目は新宿エリアに点在する2つのスペースに訪問いたしました。  

新宿という街は「欲望渦巻く」イメージもあってか、このエリアと美術やアートのイメージが結びつきづらいということもあるようですが、素敵なギャラリーや美術館が点在しているエリアでもあります。

まずは、講師の山内さんに案内されて、新宿三丁目駅からほど近いビルの中にあるギャラリーからお邪魔させていただくことになりました。
ギャラリーが入るビルは奥行きが薄い都会ならではの作りをしており、そのためか階段の勾配が急になっております。5階にあるギャラリーまでその急な階段を皆さまでワイワイ登ってゆくと「KEN NAKAHASHI」さんの空間がありました。 開催中の「アマポーラ・プラダ/松下真理子『生命』」を鑑賞させていただきました。  
 別会場として歌舞伎町内にあるギャラリー「デカメロン」でも展示があるそうです。

ある意味直接的で衝撃のあるビデオ作品が続いていきます。ただ、それもずっと見ているとその雰囲気にのまれてゆく自分に気づかされていきます。
そして、この作品が伝えたいであろうメッセージのようなものがなんとなく自分の中にすぅーっと入ってくるようなそんな感覚に襲われてきます。とても刺激的ではありますが不思議な魅力がありました。  

さて、ギャラリストの中橋健一さんにお話を伺いました。
こちらのギャラリーは2014年にスタートされたそうです。
中橋さんは、能登出身。幼少のころから美術・工芸に関心が高かったそうですが、上京し金融関連のお仕事に携わっていたそうです。その後大病をされ、ご自身の人生のこれからと真剣に向き合うことで、やはり好きな事・原点に返ることをやっていこうと発起され、ギャラリーをオープンし今に至るとのことです  

「新宿は身体と身体がぶつかりやすい場所。ジェンダー的にも多様な場所でもある。作品からもそんなメッセージを伝えられたらいいな。」という願いを込めてギャラリーを作る時にこの街を選んだと仰っていました。
現在このギャラリーが入っているスペースは、以前はお部屋であったとのこと。
「新宿で場所を探したときに、ホワイトキューブ的なギャラリーではない空間を作りたく苦労した。この場所は広くはないが、いろんな可能性を試せる場所だと思っている。
ギャラリーの窓から、新宿のいろんな通りが交差している様子見え、街の蠢きと作品が重なって、見てくださる方々それぞれが、独自の体験をなされる可能性がある」とのこと。
 
「ビルやギャラリー空間の物理的制限により、大きな作品が展示しづらい点はあるが、映像やサウンドなど、タイムベースドメディア作品の展示空間としてのポテンシャルを感じている。歴史を振り返ってみると、これまで誰かが、制約を突破して自由や可能性を、われわれとしての今生きている存在に残してくれた。
そうであるからこそ、私は制約する側ではなく、広げる側に居続けたい。そのためにはリスクが多少伴うことは覚悟し、信念をもってやり続けていきます」と仰っていました。  

 インパクトのある展示を拝見した後の急な階段は、すべり落ちないかドキドキしてしまいますが、遺跡の階段の上り下りの感覚に似ているな〜などと思いながら、恐る恐る1階まで下りてゆきました。
こういう勾配の急な階段を持つビルも、ある意味「遺跡級」なのかもしれませんね。
そして、近くにあります2つ目のギャラリーへ。
またもや急階段。
「third district gallery」にお邪魔いたしました。  
ここは、写真家たちが共同で運営しているギャラリーです。拝見したのは「柴田裕哉 雨と鬼灯」です。

ギャラリー自体は20年前からあり、柴田氏は2019年から参加。 新宿には有名な写真ギャラリーがいろいろあるそうですが、こちらのギャラリーのコンセプトやこだわりが自分に合っているという直感があり、展示を定期的に行っているそうです。

写真作品をじっくりみれるギャラリーでもあります。
現在在籍は6人。1回の会期は2週間。
在籍している作家の展覧会だけではなく、ここで展示したい人たちの展覧会も積極的に行っているそうです。    

そして、柴田氏からお話を伺ってみました。

「写真は芸術だと思っていない。ちゃんと写真を見てくれる人たちのために作品を作っていたい。 現代は、写真というメディアにあふれる時代。特にSNSなどで写真を使う人も多い。 爆発的に写真を撮る人が増えている中で、写真が安易なものに捉えられているのでは?という危機感も感じている。そして、本を読める人も減っていると話も聞くので、全体的に本質を捉える力が落ちているのでは?ということも気になったりしている。」とのこと。

 
「大学時代は映画をやっていたが、自分には合わないと思い写真の世界へ。 写真に感情はなく、写真は写真なんだ、あくまでも「物質」でしかないということを伝えてゆきたい。」と仰っていました。  

また、参加者の皆さまとの質疑応答の中で、 「展示したり自分の作品を見ると、自分で撮ったと思わないことが多い。 撮影時は主観だが、撮ったものを見るときは客観。その狭間で悩むことも多々あります。」とのこと。

「写真として成立してなさそうなものをどう展示して成立させられるか?を考えたりしている。 ギャラリーという空間が持つ魔力があり、展示するとうまくハマるということもあるが、それでもうまく展示できない時は、作品を考え直したりもします。 いわゆる、社会的欲求を満たしたくてやっているわけではないので、これからも続けてゆきたいと思っています。」
というお話もされていました。

このイベントを通じて、一人でも多くの方が、さまざまなギャラリーへ気軽に足を運んでいただけるようになってほしいという願いを込めて、「ふらっと入りにくいギャラリー」へ訪問してみたいと思います。

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